私の専門分野は、廃棄物の処理技術やリサイクル技術の開発、あるいは環境汚染物質の分析です。しかし、研究室では私の専門分野だけにとどまらず、幅広い分野の研究に取り組んでいます。食品廃棄物のコンポストへのリサイクル、マイクロプラスチックの分析・調査、災害廃棄物への対応策など様々です。ただし、共通している目的は「循環型社会の形成」です。その大きな目的の中ですべての研究を行っています。それらの中から、いくつかを具体的に紹介しましょう。まずは学生の関心度が非常に高いマイクロプラスチックについてです。私たちの生活の中には膨大なプラスチック製品があふれています。それが適正に廃棄処理されれば問題はないのですが、実際には海まで流れてしまい、魚が食べる、鳥が誤食するというように生態系に影響を及ぼしています。
マイクロプラスチックは、食塩、飲料水、あるいは雨や雪など地球上のあらゆるところに存在していて、人間も口にしています。人体への影響ははっきりしておらず、今のところ問題のないレベルとはされています。しかし、健康被害が出る前に何とかしなければなりません。そこで研究室では、川の中にマイクロプラスチックがどれぐらいあるのかを調べています(ネットを川の中に入れ、ろ過して集めます)。こうして収集した基礎データは、行政の施策に役立てられていく予定です。一方で、陸上のプラスチックを減らすためにはごみの不法投棄をなくすという取り組みも大切です。研究室では、不法投棄場所を可視化した地図を作成、活用し、どういった対策を立てていけばよいか、行政に対して提案を行ったりもしています。
近年よく聞くようになったのが、災害廃棄物の問題です。地震や水害などの災害が起きると、膨大な量のごみが発生します。それらを自治体では一度に受け入れることができないため、事前に仮置き場を作っておく必要があります。では、どこに作ればよいか、その候補地を挙げて、周辺の状況などによって3段階にランク分けし、あわせてそれぞれにどれくらいの量を置くことができるかを推計します。あらかじめ計画すると分別ができ、分別ができればリサイクルができ、復興もスムーズに進むはずです。こうした研究を通して、学生の皆さんは問題意識と論理的に物事を考える力を身に付けてください。「もっと良くするためにはどうすればいいか」を考えられる人は、社会でも重宝されます。また、切り替えの早い人にもなってほしいと思います。頻繁に方針が変わってしまうことを「朝令暮改」などと言いますが、根拠のある方向転換はむしろ大切です。計画を立てても思った結果が出なければ、すぐに修正する、そういった良い意味での朝令暮改を心がけましょう。