気象と一口に言ってもその分野の幅は広く、スケールによって分けられます。時間的にも空間的にも大きいのは地球温暖化、小さいものではキャンパス内の気温分布や室内気候がそれにあたります。私が対象としているのは、メソスケールと呼ばれる10〜20km、100〜200kmの一つの町や都市の範囲になります。メインで研究しているのはヒートアイランド現象がもたらす夏季の熱中症についてです。都市部の温度が高くなるのは、人工排熱および自然地の減少によるものです。その温度測定を、オリジナルの機器を使って行っています。正確な温度測定は大気が流体であるため、とても困難です。しかし、難しいからこそ面白いのです。
環境工学の一部として、森林のセラピー効果を測る研究も行っています。これはビジネスの可能性を秘めた研究でもあるため、企業と一緒に取り組んでいます。自然の力を使ってストレスを発散するための効果の検証をしているのです。この研究は、実は「癒し」を測るのではなく「ストレス」を測ることからスタートしました。室内から廊下に出ると「寒い」とストレスを感じます。これはヒートショックと呼ばれています。そんなストレス調査が、研究の入り口でした。今では「癒し」を研究しているということで、「未来のオフィスづくり」というテーマのシンポジウムにパネリストとして呼ばれるなど、思わぬ広がりも見せています。いずれにせよ新しい研究であり、注目度が高いことは確かです。
もう一つ最近力を入れているのが、雲海の予測です。市町村から委託を受けて動くことが多いのですが、10日間の雲海予報というものを出しています。盆地の各所にカメラを設置してタイムラプス動画を作成し、霧や気温、湿度の関係性を見て、どのようなときに雲海が出現するかを予測します。3日以内の予報なら87%、10日後でも70%以上という精度の高い予報は、注意報のみならず観光誘致にも活用することができます。私はゼミの学生たちと一緒に全国各地に気象観測に出かけます。フィールドワークが大好きな人にとっては、観測が幸せに感じるはずです。私自身も解析をしているより、外でデータを集めることが好きな性分です。最近はこだわって、測定する機器まで自分で作ってしまいました。そのことが注目されて、テレビ番組にも出演しました。学生の皆さんには失敗を恐れず、研究成果よりも過程を大事にしてほしいと思います。自分で勝手にルールや制約を設けることなく、その過程を楽しんでください。