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角野 貴信准教授

【専門】土壌学、生物地球化学

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土壌から過去と現在を知ることで
未来予測につなぐ

私の研究には2つのトピックがあります。1つは地球温暖化に関わる土壌中の有機物に関する研究です。長い年月をかけて蓄積された有機物は、さまざまな人間活動によって減っていきます。有機物は分解すると二酸化炭素が出るため、これが大気中にどれくらい放出されるようになるのか予測します。もう1つは土壌侵食に関する研究です。土壌が水系にどのように移動するのか、上流域の変化をとらえて明らかにする方法を探索しています。このように土壌、つまり過去と現在をよく知ることで未来を予測したいと考えています。

▲森の中で黒ボク土を調査中

土から奪ってもいいけれど
ちゃんとリターンするという考え

「土から奪わずに生きられるか」。これは私の研究室の合言葉です。人間はこれまで社会の発展のために環境に大きな負荷をかけてきました。しかしこれからは環境に負荷をかけずに社会を回していかなければなりません。それが端的に表れているのが、脱炭素という世の中の流れです。もちろん実際には土から奪わずに生きていくことはほぼ不可能でしょう。お米も野菜も、私たちは土を経由して養分を吸収しています。「土を食べている」と言ってもよいほどです。だから奪ってもいいけれど、ちゃんとリターンするような形で循環していこうというわけです。土に負荷をかけないやり方を考えることは、例えるなら預金通帳の貯金を減らさないようにするにはどうすればいいか、あるいは自分の体重を健康的な状態に保つためにはどうすればいいかを考えるのと同じことです。

自然の微妙な変化を感じ取り
考えるきっかけにしてほしい

ゼミ生の卒論については、自由にやりたいテーマを選んでもらいます。「ミミズで油を分解させたい」「シジミを使って実験したい」など、学生の発想のユニークさにはいつも驚かされます。卒論はあくまで個々の研究ですが、実習時の土壌調査や実験においてはゼミ生たちのチームワークが発揮されます。雨の中を手分けしながらサンプリングしたり実験データを取ったりしている姿を見ると、連携ができているなと頼もしさを感じます。あるときブナの森の中で、雨の合間に日が差し込み、とても美しい光景に出合いました。そういう時間をみんなで共有することも、きっと貴重な経験になるでしょう。また実験では土の匂いが変わるといった微妙な変化を感じる瞬間があります。学生の皆さんにはそういう変化に敏感であってほしい、「なぜこんなことが起きるんだろう」と考えてほしいと思います。

先生からのメッセージ:2022年1月撮影